2020年11月24日
来年4月1日施行! 気になる同一労働同一賃金の取組みと賃金の動向について
◆「同一労働同一賃金」とは?
同一企業における、いわゆる正社員と非正規社員(有期雇用労働者、パートタイマー、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指し、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
また、非正規社員から求めがあった場合に、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主が説明すること、また説明を求めたことを理由に不利益取扱いをしないことが義務付けられます。
2020年4月1日より大企業と労働者派遣について適用され、中小企業は2021年4月から適用となります。
◆企業・労働者はどんな反応をしている?
11月6日の閣議に提出された「令和2年度 年次経済財政報告」の第2章にて、同一労働同一賃金の取組みや影響に関する内容がまとめられているので、一部を紹介します。
待遇の違いについて、「業務の内容等が同じ正社員と比較して納得できない」と回答したパートタイマー・有期雇用労働者の割合は、「賞与」37.0%、「定期的な昇給」26.6%、「退職金」23.3%、「人事評価・考課」12.7%となっています。
一方、取組みの実施率は、「業務内容の明確化」35.2%、「給与体系の見直し」34.0%、「諸手当の見直し」31.3%、「福利厚生制度の見直し」21.2%、「人事評価の一本化等」17.7%となっています。
また、企業が課題と感じていることは、「費用がかさむ」30.4%、「取り組むべき内容が不明確」19.5%、「社内慣行や風習を変える事が難しい」18.7%、「効果的な対応策がない、分からない」16.5%、「業務の柔軟な調整」16.1%となっています。
◆対応に必要な費用の一部に助成金を活用することもできます
厚生労働省のキャリアアップ助成金は、キャリアアップ計画を提出して6つのコースから選んで非正規社員の待遇改善等を行う場合に、費用の助成が受けられます。
近年、「同一労働同一賃金」に向けて対応を進める企業で多く利用されていますが、申請が適正になされず不正受給と判断されると、支給取消しやペナルティが課されるだけでなく企業名が公表されます。
助成金の利用も含めて、「同一労働同一賃金」への対応は、専門家に相談しながら進めるのがよいでしょう。
年次有給休暇の取得が過去最高~令和2年就労条件総合調査~
厚生労働省から令和2年就労条件総合調査の結果が公表されました。今年の特徴は、年次有給休暇の取得日数が過去最多の10.1日、取得率が過去最高の56.3%となったことです。
◆労働時間制度
(1)所定労働時間
1日の所定労働時間は、1企業平均7時間47分(平成31年調査7時間46分)、労働者1人平均7時間46分(同7時間45分)となっています。
週所定労働時間は、1企業平均39時間24分(同39時間26分)、労働者1人平均39時間03分(同39時間03分)となっています。
週所定労働時間の1企業平均を企業規模別にみると、「1,000人以上」が39時間00分、「300~999人」が39時間09分、「100~299人」が39時間12分、「30~99人」が39時間30分となっています。産業別にみると、「金融業、保険業」が38時間17分で最も短く、「宿泊業、飲食サービス業」が39時間51分で最も長くなっています。
(2)年間休日総数
平成31年・令和元年(又は平成30会計年度)の年間休日総数の1企業平均は109.9日(平成31年調査108.9日)、労働者1人平均は116.0日(同114.7日)となっています。
1企業平均年間休日総数を企業規模別にみると、「1,000人以上」が116.6日、「300~999人」が114.9日、「100~299人」が113.0日、「30~99人」が108.3日となっています。
(3)年次有給休暇
平成31年・令和元年(又は平成30会計年度)1年間に企業が付与した年次有給休暇(繰越日数を除く。)は労働者1人平均18.0日(平成31年調査18.0日)、そのうち労働者が取得した日数は、10.1日(同9.4日)で、取得率は56.3%(同52.4%)となっており、取得日数は過去最多(昭和59年以降)、取得率は過去最高(昭和59年以降)となりました。
◆賃金制度
(1)時間外労働の割増賃金率
時間外労働の割増賃金率を「一律に定めている」企業割合は81.6%(平成31年調査84.0%)となっており、そのうち時間外労働の割増賃金率を「25%」とする企業割合は93.3%(同94.9%)、「26%以上」とする企業割合は4.5%(同5.0%)となっています。
(2)諸手当
令和元年11月分の常用労働者1人平均所定内賃金は319.7千円となっており、そのうち諸手当は47.5千円、所定内賃金に占める諸手当の割合は14.9%となっています。
また、所定内賃金に占める諸手当の割合を企業規模別にみると、規模が小さいほど高くなっています。
テレワークセキュリティの実態は?
(総務省調査より)
◆急速に普及したテレワークと課題
今年になって、新型コロナウイルスへの対応として、初めてテレワークを導入したという企業も多いところです。総務省が今年の7~8月に従業員10名以上の3万社に実施した調査でも、回答数5,433のうちテレワーク実施企業は1,569となっています。
ただ、急場しのぎで始めた企業も多く、テレワークに必要な機材やセキュリティ体制も整わないまま実施している企業も多いのではないでしょうか。実際に、同調査でも、テレワークの導入にあたっての課題として「テレワークに必要な機器の整備」(54.3%)、「セキュリティ確保」(43.1%)が挙がっています。
◆情報セキュリティ管理体制
本調査によれば、「情報セキュリティに関する明確な担当者は存在しない」とする企業が2割もみられました。また、情報セキュリティの管理体制等に関する対策の実施状況として、「情報セキュリティポリシーの策定」(34.1%)、「定期的なセキュリティ教育・啓発活動」(32.9%)、「社内情報の重要度レベルによるファイル等へのアクセス制限」(28.9%)が挙がっています。いずれも3割程度にとどまっており、対策が十分でない企業がまだ多いことがわかります。
◆サイバー攻撃に関する対策の実施状況
本調査では、「各種サイバー攻撃に関する対策の実施状況」として、「セキュリティ対策ソフト(ウイルス対策ソフト等)が常に最新になるように指示・設定をしている」(64.4%)、「OSやソフトウェアについて最新の状態となるようアップデートを指示・設定をしている」(53.6%)、「インターネットと社内のネットワークとの間に、ファイアウォールを設置している」(47.7%)が続きますが、セキュリティ対策ソフトが常に最新になるように指示・設定している企業は約3分の2にとどまっていることがわかります。
◆十分な対策を
最近は、「ランサムウエア」と呼ばれる身代金要求型のウイルスによる被害なども多く報告されています。企業がサイバー攻撃を受け、社内の重要な情報が流出したり、金銭を要求されたりする被害は後を絶ちません。テレワークが普及する中、セキュリティ対策が不十分な企業は、そのような攻撃の格好の餌食となってしまいます。企業としては真剣に対策を検討したいところです。
ウィズコロナ時代の忘年会
◆どうする? 今年の忘年会
間もなく忘年会のシーズン。例年であれば、メンバーに声をかけて日程を調整したり、場所の選定をしたりという頃合いかもしれません。しかし、今年は新型コロナウイルス感染症拡大により、例年通りとはいきそうにありません。ウィズコロナ時代の忘年会について、人々はどのように考えているのでしょうか? 日本フードデリバリーは「ウィズコロナ時代における忘年会」に対する意識調査を行いました。
◆忘年会をリスクと捉える人が多数
「忘年会の参加によって新型コロナへの感染リスクが高まると思うか?」という質問には、「高まる」「どちらかといえば高まる」と答えた人が合わせて94.9%に上りました。多くの人が、従来の忘年会の様式では感染リスクが高まると考えていることが伺えます。そして、「今年、職場の忘年会が開催された場合に参加したいか?」という質問では、「参加したくない」「どちらかといえば参加したくない」が合わせて61.5%となり、乗り気ではないと答える人が多数派となりました。なお、「参加したくない」と回答した人の理由は、「新型コロナウイルスへの感染が不安だから」というものが大半でした。
◆重視するのは感染防止対策
忘年会で重視するポイントを尋ねる問いに対しては、「感染防止対策を行っている」(75.7%)が最多となりました。また、開催する場合に望ましいかたちとして、以下のような傾向が読み取れました。
・開催場所は、感染防止対策がきちんと行われている「飲食店」か「オフィス」を希望する人が多い。
・時間の長さは、8割の人が「2時間未満」が望ましいと回答。
・時間帯は、就業時間内の開催を望む人と、終業後の開催を望む人の割合が、約半々。
アンケートからは、新型コロナウイルスへの感染を避けるための行動をしようという意識が強く感じられました。こういった意識をくみ取りながら、社内で意見をすり合わせ、どうするかを選択していきましょう。
参考:
「ウィズコロナ時代の忘年会に対する意識調査」(日本フードデリバリー株式会社)
テレワークに対応できる体制整備は必然
◆緊急事態宣言から半年後の状況
人材サービス会社のアデコ株式会社が行った調査で、緊急事態宣言から半年後における企業のテレワークの状況等が明らかになりました。
人事・総務担当者1,200名を対象にしたこの「緊急事態宣言から半年後の企業テレワーク実態調査」によると、緊急事態宣言下でテレワークを導入した企業のうち82%がテレワークを継続しています。そのうち42%が全社的に継続、40%が一部の部署のみ継続しているとのことです。
テレワークを継続している企業の半数以上で出社日は設定せず、個人の裁量にゆだねられているとのことです。出社日を決めている場合は、週3日出社としている企業が最も多いそうです。
◆リテラシー
調査では、今後の働き方については、 「テレワークの導入、継続予定」が53%との回答が過半数を占める一方、「廃止、縮小、導入予定なし」が34%となっています。この傾向は従業員1,000名未満の企業で顕著となっています。
ただ、テレワークの継続に積極的でない場合でも、他の多くの企業でテレワークが広がるなか、働き方の変化に伴う様々なツールの使用法や、文字には表れてこない仕事のスケジューリングのコツのような知識は、社員はリテラシーとして知っておくべき事柄です。新しい働き方が広がる時代の仕事マナーともいえるでしょう。
こうしたことも、今後は社員教育のとして考えていく必要があるでしょう。テレワークを導入しない企業でも、テレワークという働き方に対応できる体制の整備は必ず必要になることです。
◆制度整備等の検討を
また、緊急事態宣言下のテレワーク導入は、急だったこともあり、本調査でも、テレワーク補助などの新しい福利厚生施策等の導入状況については、42.2%が「検討中」と回答しており、制度整備が未対応のところが多いようです。
また、パソコン等を貸与する場合も、業務によって使いやすい仕様としたりするなど、新型コロナの混乱が少し落ち着いた今、当初は手が付けられていなかった、きめ細かな対応を考えるべきタイミングになったといえるでしょう。
「緊急事態宣言から半年後の企業テレワーク実態調査」(アデコ株式会社)
これからの人材育成戦略
「リスキリング」
◆「リスキリング」とは
「リスキリング(Reskilling/Re-skilling)」という言葉をご存じですか? これはもともと「従業員の職業能力の再開発・再教育」という意味合いで使われている言葉ですが、近時は、「市場ニーズに適合するため、保有している専門性に、新しい取組みにも順応できるスキルを意図的に獲得し、自身の専門性を太く、変化に対応できるようにする取組み」と位置づけられています。
◆「リスキリング」の有用性
デジタル化の進展や、コロナウイルスの問題など、現在、企業には、数多くの変化が生じています。あらゆる変化に備える必要があり、そのための対策の一環として、従業員の専門性やスキルを柔軟に取り扱う観点から、リスキリングの有用性が注目を集めています。たとえば、変化が生じるたびに、その変化に対応する新しいスキルを持つ人材を雇おうとするのは困難ですが、従業員がすでに習得しているスキルを再開発して底上げすることで対応が可能になれば、既存の人材で、企業が直面する多種多様な課題に対応することができ、大変有益です。
一方で、日本においては、488万4,000人の労働者がリスキリングを行う必要があるとされており(IBMの2019年調査結果による)、まだまだ取組みが進んでいない状況が窺えます。
◆「リスキリング」の取組み
リスキリングに取り組む上では、従業員の能力や適性を把握して、今後獲得すべきスキルやキャリアの方向性を決定することが大切です。発見したスキルギャップを埋めるための学習を繰り返すことで、従業員のスキルは徐々に底上げされていきます。
企業にとってもメリットの多いリスキリング。人材を活用するための戦略の一環として、投資を検討してみてもよいかもしれません。
来年4月施行の70歳までの就業機会の確保(努力義務)について
◆これまでの高齢者雇用安定法(65歳までの雇用確保(義務))の内容
高年齢者雇用安定法は、①60歳未満の定年禁止、②65歳までの雇用確保措置を定めています。①は、事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければならないということです(法8条)。②は、定年を65歳未満に定めている事業主は、ア.65歳までの定年引上げ、イ.定年制の廃止、ウ.65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入、のいずれかの措置を講じなければならないといものです(法9条)。①②いずれも当該労働者を60歳まで雇用していた事業主を対象に義務づけられています。
◆令和3年4月1日からの改正~70歳までの就業機会の確保(努力義務)の内容
65歳から70歳までの就業機会を確保することを目的に、来年4月1日からは、上記65歳までの雇用確保(義務)に加え、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が新設されました。当該労働者を60歳まで雇用していた事業主が対象となります。
④⑤は創業支援等措置(雇用によらない措置)となり、過半数労働組合等の同意をえて導入します。
◆留意点
① 70歳までの就業確保措置は努力義務となるため、対象者を限定する基準を設けることが可能となります(70歳までの定年引上げ、定年制の廃止を除く)。ただし、対象者の基準を設ける場合は、労使間で十分に協議した上で過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。また、労使間での十分な協議の上で設けられた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨等に反するものは認められません(不適切な例として、会社が必要と認めた者に限るなど)。
② 継続雇用制度、創業支援等措置を実施する場合において、「心身の故障のため業務に耐えられないと認められること」「勤務(業務)状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責(義務)を果たし得ないこと」といった事項等を就業規則や就業支援等措置の計画に記載した場合には、契約を継続しないことが認められます。