2021年12月27日
求人サイト等の運営に関するルールが整備されます
◆求人広告件数は回復傾向
公益社団法人全国求人情報協会の集計結果で、10月の求人広告の職種分類別件数が全体で922,904件となり、前年同月比+20.2%と増加しています。雇用形態別でも、正社員が同+41.1%、アルバイト・パートが+11.8%、契約社員他が+19.1%と、求人が回復傾向を見せています。
◆ハローワークより求人サイト等経由で採用決定に至る求職者が多い
同協会が厚生労働省の研究会に提出した資料によれば、求人メディア(折込求人紙、フリーペーパー、求人情報WEBサイト等)経由での採用決定が37.6%、ハローワーク経由での採用決定が12.0%と、雇用仲介事業者が労働市場における存在感を増しています。
◆ルール未整備の中、トラブルも
一方、こうした求人メディアの利用をめぐるトラブルも増えています。
例えば、広告等で示された条件と異なる内容が含まれていないかを求職者が確認する労働契約締結前の労働条件明示に関するトラブル、個人情報の取扱いをめぐるトラブル、ハローワークに求人を提出した企業が広告の無料掲載を持ちかけられ、無料期間終了後有料契約に自動更新されて高額な掲載料を要求されたりするトラブルなどが確認されています。
事業者の中には苦情・相談体制が整っていないところもあり、安心して利用できる仕組みづくりが求められています。
◆来年の通常国会に職業安定法の改正案を提出予定
12月8日、こうした状況を受けて労働政策審議会が厚生労働大臣に対し、ルールの整備に関する建議を行いました。厚生労働省では、この建議を踏まえて職業安定法の改正法案要綱を作成するとしており、来年の通常国会への法案提出が予定されています。
【公益社団法人全国求人情報協会「求人広告掲載件数等集計結果(2021年10月分)」】
【厚生労働省「第15回 労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」資料】
いまどき就活生の意識の変化と企業選びのこだわりとは?
◆就活生の意識の変化
長期化するコロナ禍で、学生の就職意識はどのように変化しているのでしょうか。
就職情報大手のディスコの調査によると、2021年10月1日の正式内定解禁日における2022年卒の学生の内定率は、前年(88.6%)よりはわずかに下回るものの、88.4%でした。同社の2023年卒学生に向けたモニター調査では、1学年上の先輩(2022年卒)と比較して、就職戦線をどう見ているかという質問に対して、「非常に厳しくなる」7.1%、「やや厳しくなる」44.0%と、厳しくなると答えた学生は 51.1%で、前年同期調査(計 93.7%)よりも大幅に減少しています。一方で、「やや楽になる」が急増し(6.0%→48.8%)、「厳しくなる」と見ている学生と、「楽になる」と見る学生がほぼ半々で、見方が分かれています。
◆企業選びのこだわり
学生からよく挙がる5項目(社風・人/仕事内容/給与・待遇/勤務地/企業規模)へのこだわり度合いについては、最も「強くこだわる」のが「社風・人」(57.5%)で、「ややこだわる」(34.5%)をあわせると 9 割(計 92.0%)を超えています。「仕事内容」も9割超(計 91.3%)、次いで「給与・待遇」が計86.4%、「勤務地」が計68.6%、「企業規模」は計56.6%となっています。
つまり、「どこでどれだけのことをしてくれるのか(待遇)」よりも、自発的に「どんな会社(環境)で何がしたいか」を重要視する学生が多いということがうかがえます。
【株式会社ディスコ「23卒学生の11月後半時点の就職意識調査」】
運転前後のアルコールチェックが義務化されます
一定台数以上の自動車を使用する事業所で選任する安全運転管理者には、運転前に、運転者が飲酒により正常な運転をすることができないおそれがあるかどうかを確認することが義務付けられています。しかし、運転後に酒気帯びの有無を確認することやその確認内容を記録することは義務付けられていませんでした。
今年6月に千葉県八街市で発生した交通死亡事故を受け、安全運転管理者の行うべき業務として、運転前後におけるアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等が義務化されました。その内容は、令和4年4月1日施行と令和4年10月1日施行の2通りあります。
◆令和4年4月1日施行の義務
① 運転前後の運転者に対し、当該運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること。
② 酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること。
「目視等で確認」とは、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認することをいいます。運転者の酒気帯び確認の方法は対面が原則ですが、直行直帰の場合など対面での確認が困難な場合にはこれに準ずる適宜の方法で実施すればよいとされています。
◆令和4年10月1日施行の義務
① 運転者の酒気帯びの有無の確認をアルコール検知器を用いて行うこと。
② アルコール検知器を常時有効に保持すること。
アルコール検知器については、酒気帯びの有無を音、色、数値等により確認できるものであれば足り、特段の性能上の要件は問わないものとされています。また、アルコール検知器は、アルコールを検知して、原動機が始動できないようにする機能を有するものが含まれます。
【警察庁「安全運転管理者の業務の拡充についてポスター及びリーフレットを掲載しました。」】
職場のハラスメント防止措置義務化への対応は進んでいますか?
◆4月から中小企業もパワハラ防止措置が義務化に
2020年6月1日にパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行されました。中小企業については、2022年3月31日まではパワハラ防止措置は努力義務とされ、猶予期間が設けられていたところ、いよいよ2022年4月1日から義務化されます。
未対応という会社は、すぐにでも確認をしていきましょう。
◆パワハラ相談件数増加の企業が最多
一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)が実施した「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」(調査期間2021年9月7日~10月15日、会員企業400社から回答)によれば、5年前と比較した相談件数として、パワーハラスメントに関する相談件数は、「増えた」が44.0%と最も多くなっています。増加の理由として、「法施行に伴う社会の関心の高まり、相談窓口の周知の強化」などが挙げられています。
すでに施行済みである大企業の会員が多い経団連ですが、今後中小企業でも同様のことが予想されます。
◆効果的な取組みの例
本調査によれば、ハラスメント防止・対応の課題について、特に当てはまる上位3つとして、「コミュニケーション不足」(63.8%)、「世代間ギャップ、価値観の違い」(55.8%)、「ハラスメントへの理解不足(管理職)」(45.3%)が挙げられています。これらへの効果的な取組み事例としては、ハラスメントに関する研修の実施、eラーニング実施、事案等の共有、コミュニケーションの活性化のための1on1ミーティングの実施、社内イベントの実施などが挙げられています。ぜひ参考にしてみてください。
【日本経済団体連合会「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」】
新型コロナワクチンの追加接種(3回目接種)実施
◆なぜ3回目が必要?
新型コロナワクチンの追加接種(3回目接種)実施について、厚生労働省がお知らせしています。ワクチンの予防効果は時間の経過に伴い徐々に低下していくことが示唆されています。このため、感染拡大防止および重症化予防の観点から、初回(1回目・2回目)接種を完了したすべての方に対して、追加接種の機会を提供することが望ましいとされています。
3回目接種は、初回と同様、無料で受けられます。対象者は以下をすべて満たす方全員です。
○2回目接種を完了した日から、原則8カ月以上経過した方
○18歳以上の方
○日本国内での初回接種(1回目・2回目接種)または初回接種に相当する接種(海外や製薬メーカーの治験等での2回接種)が完了している方
◆追加接種までの流れ
接種を行う期間は、令和3年12月1日から令和4年9月30日までの予定です。2回目の接種完了から原則8カ月以上後に接種できるよう、お住まいの市区町村から追加接種用の接種券等が送付されます。初回(1回目・2回目)接種時と同様、実施している医療機関や会場を探し、予約をします。なお、初回と同様に大学等での職域接種の実施も予定されています。
◆ワクチン接種は高い効果があるが、強制ではない
新型コロナワクチン接種を受けることは強制ではありません。感染症予防の効果と副反応のリスクの双方について理解したうえで、自らの意志で接種を受けるものです。ですから、職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをしたりしてはいけません。厚生労働省では、ワクチン接種に関する情報提供ページを用意し、相談窓口も設置しています。不適切な取扱いのないよう、あらためて社内でルールを確認しておきましょう。
コロナ禍で導入した制度を見直すのは今
◆時差出勤 変わらず15%程度
公益財団法人日本生産性本部が行った「第7回 働く人の意識調査」の結果によると、時差出勤をした人は15.1%(10月時点)となっています。2020年5月の初回調査でも16%でしたので、大きな変化は見られません。
コロナ禍における時差出勤は、人混みを避けることが大きな理由でしょう。日本ではコロナが沈静化傾向にあり、自社における効果を検証するにはよいタイミングかもしれません。
◆テレワーク浸透の一方…
また同調査では、テレワーク実施率は22.7%とのことです。様々な調査において「テレワークの効果があった」という回答がありますが、業務の効率が高まるというよりは、通勤のストレス・疲労がないことが一番大きな理由のようです。
一方で、社内のコミュニケーションや相談が困難・不便、長時間労働につながる、仕事と生活の境界があいまいになることによる過労など、テレワークのデメリットも指摘されはじめています。指示や相談が一度にできない、チャット等のツールを使うも個々の使い方や習熟度がバラバラで統率が取れない、全員で回していた仕事が一部の人の負担になってしまうなど、社員に聞けば改善すべき点もいろいろと出てくるでしょう。
◆見直すタイミングは今
コロナ禍で取組みを始めたさまざまな施策が、自社での業務効率として実際にはどうなのか、その効果や課題について一旦冷静に分析・判断すべきタイミングは、コロナが落ち着き、気持ち的にも来年に向かいつつある今なのではないでしょうか。
コロナ禍対応に限らず、会社の制度については、調整しながら運用することが重要です。一度導入したらそれきり、という事態は避けたいものです。
社員の働き方を管理する人の重要性はますます高まってきます。社員の意見を反映し、納得感を醸成しながら見直しを進めていきましょう。
ご存じですか? 障害年金診断書の特例措置
◆コロナ禍と障害年金
みなさんの事業所には、障害年金をもらいながら働いている方はいませんか? 障害年金を受給している方は、各自に決められた提出期限までに、障害認定日より3か月以内の現症の診断書を提出する必要があります。この提出が遅れたり、記載内容に不備があったりすると、障害年金の支払いが一時差し止められてしまいます。
しかし、今は、新型コロナウイルス感染症の影響により、医療機関を受診することができずに手続きを円滑に行うことができないケースも想定されるところです。そこで現在、診断書の提出についての特例措置が講じられています(日本年金機構「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言等を踏まえた障害年金診断書の取扱いについて」(令和3年9月10日))。
この措置について、会社からも伝えてあげましょう。
◆障害年金診断書の提出期限についての特例措置
具体的には、障害年金診断書の提出期限が令和3年3月末日から同年11月末日である人については、令和3年12月末日までに障害年金診断書の提出が行われる場合、障害年金の支払いの差止めは行われません。
◆その他の特例措置
障害年金については、その他の特例措置も講じられています。例えば、診断書提出に伴い、年金が増額改定される場合には、当初の提出期限をベースとして年金が増額改定されます。逆に、年金が減額改定される場合や、支給停止となる場合は、猶予期限をベースに、減額改定・支給停止がなされます。
障害年金は、障害を負った方が自分の体調と相談しながら働き続けるためにも大切なものです。今後も状況によりさらなる特例措置や救済策が講じられる可能性がありますから、会社としても積極的に情報を収集し、案内できるようにしておきたいものです。
暴力団関係で相談したい……
◆暴力団への対応
暴力団(かもしれない)から脅しなどを受けた場合、どうすればよいでしょうか。警察庁のホームページでは、暴力団への対応として、来訪者の氏名、所属団体、連絡先等の身分を確認する。複数で応対し、来訪理由・用件を具体的に確認する。また、言動には注意し、その場限り、一時しのぎ的な返答はしない、不当な要求は明確に断る、暴力団員から「一筆書けば許してやる。」などと言われても、書類作成や署名押印は断固拒否することが重要としています。
◆早期通報・相談がカギ
多くの人は、自分は暴力団等には関わりがない思いがちですが、いつ、どこで、何が発端で関わりができるかわかりません。いち早く相談・通報することが、暴力団問題解決のカギとなるようです。相談・通報窓口としては、各都道府県警察(110番)、全国暴力追放運動推進センター、都道府県暴力追放運動推進センター、匿名通報ダイヤルがあります。
◆相談事例
都道府県によって異なることもあるかもしれませんが、警視庁のホームページには、暴力関係での相談事例が多数掲載されており、参考になります。例えば、「取引先が、反社会的勢力か確認したい」という相談に対しては、契約相手が暴力団関係者かどうかなどの情報を、個々の事案に応じて可能な限り提供してくれるようです。
職場における労働衛生基準が変わりました
「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令」が令和3年12月1日に公布され、職場における一般的な労働衛生基準が見直されました。この改正省令は一部の規定を除き、同日から施行することとされました。
社会状況の変化に合わせすべての働く人々を視野に対応するもので、改正に伴って変更される点は以下のとおりです。
◆照度の作業区分を2区分とし、基準を引き上げ(※令和4年12月1日施行)
現在の知見に基づいて事務作業の区分が変更され、基準が引き上げられました。事務作業における作業面の照度の作業区分は以下のように2区分とし、基準も以下のように引き上げました。
・一般的な事務作業(300ルクス以上)
・付随的な事務作業(150ルクス以上)
個々の事務作業に応じた適切な照度については、作業ごとにJISZ 9110などの基準を参照します。
◆便所の設備:新たに「独立個室型の便所」を法令で位置付け
便所を男性用と女性用に区別して設置するという原則は維持されますが、「独立個室型の便所」(男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所)を付加する場合の取扱い、少人数の作業場における例外と留意事項が以下のように示されました。なお、従来の設置基準を満たしている便所を設けている場合は変更の必要はありません。
・男性用と女性用の便所を設けた上で、独立個室型の便所を設けたときは、男性用及び女性用の便所の設置基準に一定数反映させる。
・少人数(同時に就業する労働者が常時10人以内)の作業場において、建物の構造の理由からやむを得ない場合などについては独立個室型の便所で足りるものとした。既存の男女別便所の廃止などは不可。
◆救急用具の内容:具体的な品目の規定を削除
作業場に備えるべき負傷者の手当に必要な救急用具・材料について、一律に備えなければならない具体的な品目の規定がなくなり、職場で発生することが想定される労働災害等に応じて、応急手当に必要なものを産業医等の意見、衛生委員会等での調査審議、検討等の結果等を踏まえ、備え付けることとしました。
【厚生労働省「職場における労働衛生基準が変わりました ~照度、便所、救急用具等に係る改正を行いました~」】
令和3年の賃上げの実施状況と来年度の動向
◆令和3年中の賃金改定状況
厚生労働省から、令和3年「賃金引上げ等の実態に関する調査」(有効回答企業数1,934 社)の結果が公表されました。
令和3年中における賃金改定の実施状況(予定を含む)の調査結果は、「所定内賃金の1人当たりの平均額(以下「1人平均賃金」という)を引き上げた・引き上げる」と回答した企業の割合は80.7%(前年比0.8ポイント減)、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」は1.0%(同1.1ポイント減)、「賃金の改定を実施しない」は10.1%(同0.6ポイント増)となっています。 また、1人平均賃金の改定額は、4,694円(同246円減)、改定率は1.6%(同0.1ポイント減)となっています。
産業別では、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業は「学術研究、専門・技術サービス業」が93.7%(同6.7ポイント増)、「賃金の改定を実施しない」との回答は「宿泊業、飲食サービス業」が21.5%(同2ポイント増)と最も多く、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が大きく表れています。
◆来年度の賃上げ税制の効果に期待
政府与党は、来年度の税制改正大綱に、賃上げした企業への優遇措置として法人税の控除率の引上げを明記しました。
帝国データバンクが11月に行った「2022年度の賃上げに関する企業の意識アンケート」(有効回答企業数1,651 社)の結果によると、「税制優遇幅に関わらず賃上げを行う」と回答した企業は48.6%でした。また、税制優遇が大きければ79.4%の企業が賃上げに前向きという回答でした。企業は来年度、賃上げの実施を考えていることがうかがえます。
【帝国データバンク「2022年度の賃上げに関する企業の意識アンケート」】
1月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
11日
※ただし、6ヶ月ごとの納付の特例を受けている場合には、令和3年7月から12月までの
徴収分を1月20日までに納付
31日
本年最初の給料の支払を受ける日の前日まで