2018年12月18日
賃上げ、過去最高を更新~厚生労働省の平成30年調査結果から
◆賃上げは過去最高を更新
厚生労働省が先月27日、平成30年の「賃金引上げ等の実態に関する調査結果」を公表しました。調査対象企業数は3,543社で、うち有効回答企業数は1,779社。有効回答率は50.2%でした。
これによると、定期昇給やベアによる1人平均の賃上げ額は月額5,675円で、前年から48円増え、比較可能な1999年以降で過去最高を2年連続で更新しました。賃上げ率としては2.0%で、前年比で横ばいでした。
◆賃金改定の実施状況
平成30年中に「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業割合は89.7%(前年87.8%)、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」は0.4%(同0.2%)、「賃金の改定を実施しない」は5.9%(同6.3%)でした。
◆賃金の改定額
平成30年中の1人平均賃金の改定額(予定を含む)は5,675円(前年5,627円)で、「1人平均賃金の改定率」は2.0%(同2.0%)でした。また、企業規模別にみると、「1人平均賃金の改定額」は、5,000人以上の企業で7,109円(同6,896円)、1,000~4,999人で5,645円(同5,186円)、300~999人で5,247円(同5,916円)、100~299人で5,039円(同4,847円)という結果でした。300~999人規模の企業で改定額が前年を下回りましたが、それ以外では前年比プラスの改定水準となっています。
(注) 1人平均賃金は、所定内賃金(諸手当等を含むが、時間外・休日手当や深夜手当等の割増手当、慶弔手当等の特別手当を含まない)の1人当たりの平均額。
◆定期昇給等の実施
平成30年中の賃金改定が未定以外の企業(賃金の改定を実施しまたは予定している企業および賃金の改定を実施しない企業)のうち、定期昇給を「行った・行う」企業割合は、管理職69.7%(前年69.0%)、一般職80.1%(同77.5%)で、管理職、一般職ともに前年より上昇しました。また、定期昇給制度がある企業のうち、平成30年中にベースアップを「行った・行う」企業割合は、管理職24.2%(前年22.9%)、一般職29.8%(同26.8%)で、管理職、一般職ともに前年より上昇しました。
人手不足と景気の上昇を反映し、賃金の上昇傾向は調査結果にも表れているようです。
【厚生労働省「平成30 年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」(PDF)】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/18/dl/10.pdf
過去最多を記録した「人手不足倒産」~帝国データバンク動向調査より
◆「人手不足倒産」とは
帝国データバンクが実施した、全国約1万社の回答を集計した2018年9月の調査によると、正社員が不足していると回答した企業は全体の51.7%を占め、1年前の同調査(48.2%)に比べ増加しています。帝国データバンクでは、従業員の離職や採用難等により収益が悪化したことなどを要因とする倒産(個人事業主含む、負債1,000万円以上、法的整理)を「人手不足倒産」と定義し、過去5年半で発生した人手不足倒産を集計・分析しています。
今回は、2018年度上半期(2018年4~9月)の結果をもとにまとめます。
◆倒産件数・負債総額
2018年度上半期の人手不足倒産件数は76件で、前年同期(54件)より40.7%増えており、2年連続で過去最多を更新しています。一方、負債総額は110億4,200万円で、前年同期(191億2,900万円)より42.3%減少しています。
過去5年半の累計でみると、倒産件数447件、負債額946億9,500万円にのぼります。
◆負債規模別
負債規模別の件数をみると、「1億円未満」が45件で前年同期(22件)に比べ2倍に増えていて、5年半累計でも227件(構成比50.8%)と小規模倒産が過半を占めていることがわかります。「1~5億円未満」が上半期27件、5年半累計で179件(構成比40%)と、5億円未満の倒産が全体の90%以上を占めています。
◆業種別件数
2018年度上半期で最も件数が多かったのは「サービス業」で26件、次に建設業(19件)、運輸・通信業(17件)と続きます。さらに業種細分類別の過去5年半の累計件数をみると、「道路貨物運送」38件、「老人福祉事業」27件、「木造建築工事」26件、「労働者派遣」21件、「建築工事」19件、「受託開発ソフトウエア」18件、「土木工事」15件となっています。
◆都道府県別
都道府県別の5年半累計をみてみると、「東京都」の62件が突出して多く、次に「福岡県」34件、「大阪府」32件、「北海道」と「静岡」が並んで25件、「愛知県」22件となっています。
10月から最低賃金が全国平均で26円引き上げられたり、運送費や原材料価格が高騰していたり、企業を取り巻く環境が厳しさを増す中、「人手不足倒産」もさらに増加することが懸念されます。
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