2020年05月26日
コロナ禍で、事業者の健康診断の延期が認められています
◆対応の概要
・一般健康診断:令和2年6月末までの間、実施時期を延期することができます。
・特殊健康診断:実施することが義務づけられていますが、十分な感染防止対策を講じることが困難な場合などには、実施時期を6月末まで延期することができます。
◆一般健康診断
事業者は、労働安全衛生法第66条第1項の規定により、労働者の雇入れの直前または直後に健康診断を実施することや、1年以内ごとに1回定期に一般健康診断を行うことが義務づけられています。しかし、新型コロナウイルスの拡がりにより、健康診断等の実施会場においても、密閉・密集・密室といった「三密」空間での感染拡大が懸念されるところから、一般健康診断の実施時期については、令和2年6月末までの間、延期することとして差し支えないこととされました。
◆特殊健康診断
また、事業者は、労働安全衛生法第66条第2項および第3項、じん肺法の規定に基づき、有害な業務に従事する労働者や有害な業務に従事した後配置転換した労働者に特別の項目についての健康診断を実施することや、一定の有害な業務に従事する労働者に歯科医師による健康診断を実施すること等が義務づけられています(特殊健康診断)。
特殊健康診断については、がんその他の重度の健康障害の早期発見等を目的として行うものであるため、基本的には十分な感染防止対策を講じたうえで法令に基づく頻度で実施するのが望ましいとされていますが、十分な感染防止対策を講じた健康診断実施機関での実施が困難である場合には、一般健康診断と同様、実施時期を令和2年6月末までの間、延期することとして差し支えないこととされました。
これらの取扱いは、現時点では新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた令和2年6月末までに限られた対応とされています。詳細は厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」に掲載されていますが、随時更新されていますので、こまめにチェックする必要があります。
【厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」】
https://mhlw.lisaplusk.jp/jump.cgi?p=2&n=107
6月から職場におけるハラスメント防止対策が強化されます
◆パワーハラスメント
労働施策総合推進法の改正により、6月1日から、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。なお、中小事業主は、令和4年4月1日から義務化されます(それまでは努力義務です)。
(1) 事業主および労働者の責務
・事業主の責務……①職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないこと等これに起因する問題に対する労働者の関心と理解を深めること、②その雇用する労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう研修を実施する等、必要な配慮を行うこと
・労働者の責務……①ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に注意を払うこと、②事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること
(2) パワーハラスメントの防止のために事業主が講ずべき措置
① 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること
⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
(3) 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
事業主は、労働者が職場におけるパワーハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをすることが、法律上禁止されます。
◆セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
これらについては、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法により、雇用管理上の措置を講じることが既に義務付けられていますが、6月1日から以下のとおり、事業所の規模を問わず防止対策が強化されます(①・②の内容はパワーハラスメントと同様です)。
① 事業主および労働者の責務
② 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
③ 自社の労働者が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応
自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行い、他社が実施する雇用管理上の措置事実確認等への協力を求められた場合、これに応じるよう努めることとされました。
新型コロナ こころのケアを
◆コロナ禍でのストレス増加
新型コロナウイルスの感染拡大で、生活環境に大きな変化が生じています。買い物を含む外出や娯楽・スポーツ等の自粛、要請にともなう休業やテレワークなどです。感染症への不安だけではなく、生活や仕事への不安から強いストレスを感じている方も多いでしょう。しかし、収束がいつになるか、誰にもわかりません。不安やストレスにうまく折り合いをつけ、上手に付き合っていく必要がありそうです。
◆ストレス対処 3つの「R」
ストレスの対処には、3つの「R」が有効とされています。
① レスト(Rest):休息、休養、睡眠……意識して休息を取りましょう。疲労や睡眠不足は判断力を低下させ、不安の増加につながります。
② レクリエーション(Recreation):趣味娯楽や気晴らし……外出せずにできる娯楽を探してみましょう。人と話したい方は、ビデオ会議システムやSNSアプリを使用したオンライン飲み会もよいでしょう。
③ リラックス(Relax):ストレッチ、音楽などのリラクセーション……テレワークで通勤がなくなり、運動不足になったという声があります。ストレッチで体をほぐしたり、ゆっくり入浴したり、自分がどんな環境でリラックスできるのか考えてみましょう。
活動に制限がある中でも、これら3つの「R」を組み合わせ、ストレスに対処していきましょう。
◆こころの相談窓口
厚生労働省では、働く人々のこころの相談窓口として、以下のサービスを案内しています。自分ひとりでは抱えきれないという場合には、専門家に相談してみましょう。詳細は、各サービス提供元の情報をご確認ください。
・新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談(URL: https://lifelinksns.net/)
…新型コロナウイルス感染症の影響による心の悩みについて、チャット形式で相談できます。
・新型コロナこころの健康相談電話(番号:050—3628—5672)
…新型コロナウイルスによる不安な気持ちの対処法など、日常を落ち着いて過ごすための方法について、電話で相談できます。
・こころの耳 相談窓口案内(URL: https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/)
…「働く人の「こころの耳メール相談」」をはじめ、さまざまな相談機関・相談窓口をご紹介しています。
日本人の就業実態の傾向
◆日本人の就業実態に関する調査
「第3回日本人の就業実態に関する総合調査(2018年調査)」の結果が、(独)労働政策研究・研修機構から公表されています。この調査は、就業形態の多様化が進む中で、日本人の働き方の実情を体系的、継続的に把握することを目的としたもので、2014年に続けて3回目となります。労働時間、賃金、能力開発、労使関係等、幅広い就業実態の傾向を把握する資料として役立つと思われますので、いくつかの項目を見ていきましょう。
◆労働時間
雇用者の週実労働時間は平均41.6時間となっており、雇用形態別にみると正規従業員:47.6時間、契約社員:42.2時間、派遣社員:40.0時間、嘱託:36.6時間、アルバイト:26.4時間、パート:26.1時間という順になっています。
しかし、直近では新型コロナ対応のために、在宅勤務や店舗の休業が進んでおり、実労働時間は短くなっているようです。また、主婦層のパート社員の勤務先が休業等を行っていること等もあり、世帯としての収入は減少しているケースが多いと思われます。
◆新しい働き方
同調査では、非雇用者の状況についても調査が行われました。非雇用者の中には、自営業・自由業、会社役員などが含まれますが、近年注目されているフリーランスや雇用類似的働き方で就業しているとの回答は2.9%となっています。しかし、本人は会社に雇われていると認識している人はこの数に含まれていません。
労働契約や仕事のさせ方等の状況によっては、今後トラブルが増えてくる可能性のある部分だと思われます。また、厚生労働省ではこうした新しい働き方の労働者の保護等に関する政策を検討中ですので、今後の動きに注目しておくべきでしょう。
◆メンタルヘルス
就業者の中で過去3年間にメンタルヘルスに不調を感じたことが「ある」割合は32.8%、「ない」は64.9%となっています。3人に1人は不調を感じているようです。産業別にみると、特に「医療、福祉」(40.2%)、「教育、学習支援業」(36.9%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(36.4%)、「金融業、保険業」(35.8%)で高い傾向にあります。メンタルヘルスには長時間労働が大きく関わりますが、週80~89時間労働の群で不調者の割合が高くなっています。不調者のうち、約25%が通院治療を必要としています。
新型コロナウイルスによる影響はまだまだ未知数な部分もありますが、働き方の見直しが加速度的に進む可能性もありますので、こうした全体的な状況を把握しておくことも大切でしょう。
【労働政策研究・研修機構「第3回日本人の就業実態に関する総合調査(2018年調査)」結果PDF】
https://www.jil.go.jp/press/documents/20200422.pdf
国交省が自転車通勤の認証制度を創設! 制度の概要とメリット
自転車通勤は、環境負荷の低減、交通渋滞の緩和、従業員の健康維持増進につながることなどから、国土交通省は、企業における自転車通勤の導入を支援しています。今般、国交省では、自転車通勤を推進する企業・団体の認証制度を創設しました。
◆制度の概要
自転車通勤を推進・導入する企業・団体を国土交通大臣が認定するというものです。
◆「宣言企業」の認定要件(5月よりスタート!)
以下の3項目すべてを満たす企業・団体を「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクトの「宣言企業」に認定。事業所単位で申請可能で、有効期間は5年間(更新可)です。宣言企業に認定されると、自社のホームページや名刺等に認定ロゴマークを使用することができるほか、企業名が自転車活用推進官民連携協議会HPに紹介されます。
① 従業員用駐輪場を確保
② 交通安全教育を年1回実施
③ 自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化
◆「優良企業」の認定要件(令和2年度末頃)
上記の宣言企業のうち、自転車通勤を行う従業員が100名以上または全従業員数の2割以上を占め、以下の1項目以上を満たし、かつ独自の積極的な取組みを行っており、地域性を含めて総合的に勘案し、特に優れた企業または団体と認められるものについては、「優良企業」に認定。優良企業に認定されると、国土交通大臣より表彰されるほか、自社のホームページや名刺等に認定ロゴマークを使用するなどができます。事業所単位で申請可能で、有効期間は宣言企業の有効期間(更新可)となります。
① 自転車で通勤する従業員の定期的な点検整備を義務化
② 自転車で通勤する従業員の自転車盗難対策の義務化
③ 自転車通勤時のヘルメット着用の義務化
④ その他、自転車通勤を推進する先進的な取組み(例えば、自転車で通勤する従業員への自転車通勤手当の支給、企業・団体が自転車通勤に関して主管の部署を設けている)、自転車利用環境が整備されている(ロッカールーム、シャワー、乾燥室など)など)
◆自転車通勤のメリット
企業にとっては、通勤手当や社有車、駐車場の維持にかかる固定費などの削減が期待できますし、企業のイメージアップや従業員の生産性が向上するなどのメリットが期待できます。
◆自転車通勤導入にあたって
自転車活用推進官民連携協議会から、「自転車通勤導入に関する手引き(令和元年5月)」が出されています。自転車通勤制度の導入時に検討すべき事項などが紹介されているので、参考になります。
【自転車活用推進官民連携協議会「自転車通勤導入に関する手引き」PDF】
https://www.mlit.go.jp/common/001292044.pdf