2022年10月31日
紹介状なしで大病院を外来受診する場合の患者負担が引き上げられています
原材料価格の高騰や円安により、食品や生活用品の度重なる値上げが行われています。帝国データバンクの調査によれば、10月は年内最多の値上げが行われる月となっていて、食品だけでも6,500品目で値上げが行われるということです。一方、11月以降の値上げは年内2番目の少なさとなり、値上げの波はいったん落ち着く気配を見せています。
◆紹介状なしでの大病院の外来受診も患者負担引上げ
この10月からは、紹介状なしで大病院を外来受診する場合の患者負担の引上げも行われています。
これは、一部の病院への外来患者の集中を避けるため、一定規模以上の対象病院については、紹介状を持たずに外来受診した患者等から徴収することとされている「特別の料金」が見直されたことによるもので、対象病院の拡大も行われています。
◆具体的な見直しの内容は?
「特別の料金」は、これまで医科の初診が5,000円以上、再診が2,500円以上でしたが、初診が7,000円以上、再診が3,000円以上へと引き上げられています。歯科でも、初診が3,000円以上、再診が1,500円以上から、初診が5,000円以上、再診が1,900円以上へと引き上げられています。対象病院としては、これまでの特定機能病院、地域医療支援病院(一般病床200床以上)に、紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上)が加えられています。
厚生労働省では、この見直しに伴いリーフレットを作成し、まずは住んでいる地域の医療機関を受診し、必要に応じて紹介を受ける等、医療機関の機能・役割に応じた適切な受診を行うよう、呼びかけています。
【帝国データバンク「「食品主要105社」価格改定動向調査―家計負担額推計」】
【厚生労働省「紹介状を持たずに特定の病院を受診する場合等の「特別の料金」の見直しについて」】
2023年卒大学生の就職活動実態調査~マイナビ9月調査より
株式会社マイナビが、2023年卒業予定の全国の大学生・大学院生(以下、「学生」という)を対象に実施した「マイナビ 2023年卒大学生 活動実態調査(9月)」の結果が発表されました。来年入社予定の学生の動向がうかがえます。
◆9月末時点での内々定率は87.3%で過去最高
企業の採用意欲が高まっていることを受けてか、9月末時点での学生の内々定率は過去最高の87.3%となっています。学生の平均内々定保有社数は2.5社で、前年よりも0.2社増加しています。
◆内定通知書に関して
「内定通知書」については、「選考を通過し、自分がその企業に入社する権利があることを企業が伝える書類」と認識している学生が最も多く(27.8%)、本来の意味である「受け取ることで条件付きの労働契約(始期付解約権留保付労働契約)が成立する書類」であると認識している学生は最も少ない(12.8%)という結果が出ています。書類が持つ法的意味について、企業側からの説明が何かしら必要なのかもしれません。
◆面接時のストレス
多くの学生は、志望企業を絞ってインターンシップなどを体験しており、選考に参加している時点で、その企業への志望度合は高いはずです。しかし、第一志望ではない企業の選考の際にその企業の志望順位を聞かれるケースも多いようで(85.9%)、その際、「第一志望であると回答したが、ストレスを感じた」(42.3%)、「本当の志望順位を回答したが、ストレスを感じた」と、明確な志望順位を聞かれることにストレスを感じる学生が半数以上いることがわかりました。
◆社会人として活躍するまでに想定している期間
社会人として活躍するまでにどれくらいの期間を想定しているかという質問に対して最も多かった回答は、「入社後3年目」(45.5%)でした。一方で、「1年目(即戦力として活躍したい)」が9.8%、「2年目」が24.9%と、早い時期から活躍したいと考えている学生も一定数いるようです。
【マイナビ「「2023年卒大学生 活動実態調査(9月)」を発表」】
副業・兼業の実態調査と導入の検討に向けて
先ごろ、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」パンフレットの改訂版が厚生労働省から公表されました。7月に改訂された兼業副業ガイドラインの解説や副業・兼業に関するモデル就業規則の規定、各種様式例がまとめられています。こうしたことを踏まえ、従業員の副業・兼業の許可を検討する企業もあると思います。その前提として、副業等の実態がどうなっているのかは押さえておきましょう。
◆パーソル総合研究所の調査から
2021年の調査になりますが、パーソル総合研究所が従業員10人以上の企業に対して行った調査によると、次のような実態がわかります。
【企業側】
・副業の全面禁止は45.1%。容認(全面・条件付き)は55.0%で、2018年より3.8ポイント微増。
・副業人材を実際に受け入れているのは23.9%、受入れ意向はあるが現在受入れがないのは23.9%、受入れ意向なしは52.3%
【従業員側】
・実際に副業をしている人は9.3%(年収1,500万円以上の高所得層に多い)
・現在していないが副業意向がある人は40.2%(低所得層になるほど多い)
・動機は職種によらず、「収入の補填」が最多
この調査では、他に過重労働リスクにつながりにくい副業の特徴と、職場支援のあり方などについても報告されていますので、副業・兼業の許可を検討する際に参考になるでしょう。
◆就業規則等の整備が必要です
副業・兼業を認めるにあたっては、就業規則等の社内規程の整備や届出、労働時間の通算や健康確保等についての検討、社会保険や労災についても確認しておくべきことがあります。また、当然ながら秘密保持や競業避止の面からの検討も必要になります。
これらの対応や社内規程の整備については、弊所にご相談ください。
【パーソル総合研究所「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」】
11月は「過労死等防止啓発月間」です
厚生労働省では、11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためにシンポジウムやキャンペーンなどの取組みを行います。これは、「過労死等防止対策推進法」に基づくもので、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、関心と理解を深めるため、毎年11月に実施しています。
月間中は、国民への啓発を目的に、各都道府県において「過労死等防止対策推進シンポジウム」を行うほか、「過重労働解消キャンペーン」として、長時間労働の是正や賃金不払残業の解消などに向けた重点的な監督指導やセミナーの開催、一般の方からの労働に関する相談を無料で受け付ける「過重労働解消相談ダイヤル」などを行います。
◆取組概要
1 国民への周知・啓発
・「過労死等防止対策推進シンポジウム」の実施
過労死等の防止のための活動を行う民間団体と連携して、47都道府県48会場(東京は2会場)でシンポジウムを開催します(無料でどなたでも参加できます。)。
[参加申込方法]事前に下記ホームページからお申込みください。
https://www.p-unique.co.jp/karoushiboushisympo/
・ポスターの掲示などによる国民に向けた周知・啓発の実施
国民一人ひとりが自身にも関わることとして、過労死等とその防止に対する関心と理解を深められるよう、ポスターの掲示やパンフレット・リーフレットの配布、インターネット広告など多様な媒体を活用した周知・啓発を行います。
2 過重労働解消キャンペーン
過労死等につながる過重労働などへの対応として、長時間労働の是正や賃金不払残業などの解消に向けた重点的な監督指導や、全国一斉の無料電話相談「過重労働解消相談ダイヤル」などを行います。
注目の「人的資本経営」
◆盛り上がりをみせている「人的資本経営」
近年盛り上がりをみせている「人的資本」や「人的資本経営」のテーマですが、今年の8月30日には内閣官房から「人的資本可視化指針」が公表され、様々な媒体で取り上げられているところです。本指針は上場企業向けに人的資本に関する開示のガイドラインを示したもので、「人材戦略」の在り方について提言した「人材版伊藤レポート(2020年9月)」「人材版伊藤レポート2.0(2022年5月)」と併せて活用することが想定されています。これらは今後の企業経営の方向性の参考になるものとして、非上場企業にとっても無視できない内容となっています。
◆企業の人的資本の活性度は約30~40%
「人的資本経営」は、経済産業省の定義では「人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」であると示されています。
株式会社リクルートが企業で働く10,459人を対象に実施した人的資本経営をテーマとした調査によれば、今の職場が最適な部署配置だと感じている人、自分の知識やスキル・経験を活かすようなジョブ・アサインメント(仕事の割り当て)を実感している人の割合は約30%、現在の仕事に関する知識やスキル・経験を言語化できる人、現在の仕事のレベルを高めるために必要な知識やスキル・経験を理解している人の割合は約40%という結果だったそうです。
このような結果からみえる企業の現況は、「人材の価値を最大限に引き出す」という人的資本経営からは隔たりのあるものといえるでしょう。
◆今後の動きにも要注目
とかく大企業中心と考えられがちな「人的資本経営」ですが、中小企業でも人材獲得の面などから注目されています。8月には、経済産業省および金融庁がオブザーバーとして参加する、人的資本経営の実践に関する先進事例の共有、企業間協力に向けた議論、効果的な情報開示の検討を行う「人的資本経営コンソーシアム」が設立され、様々な情報が出されることが予想されます。今後の動きも注視していきたいところです。
【経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」】
【株式会社リクルート「人的資本経営に関する働く人の意識調査(2022)」】
マイナンバーカードで失業認定手続が可能に
◆マイナンバーカードで失業認定手続
これまで、失業の認定の際には、受給資格決定時に申請者が提出した写真を貼付した雇用保険受給資格者証(以下、「受給資格者証」という)等で、本人確認や処理結果の通知が行われていました。令和4年10月1日以降に受給資格決定される方について、本人が希望する場合には、マイナンバーカードによる本人認証を活用することで手続きを完了できるようになりました。マイナンバーカードを活用する場合には、受給資格者証に添付する写真や失業の認定等の手続きごとの受給資格者証の持参が不要になります。
◆対象となる手続きと受給資格者証等
以下の手続きの際、マイナンバーカードで本人認証を行う場合は、受給資格者証等の提出が不要になりました。なお、各種手続の処理結果は、下記( )内の受給資格通知等に印字し、交付されます。
〇雇用保険受給資格者証(雇用保険受給資格通知を交付)
〇雇用保険高年齢受給資格者証(雇用保険高年齢受給資格通知を交付)
〇雇用保険特例受給資格者証(雇用保険特例受給資格通知を交付)
〇教育訓練給費金および教育訓練支援給付金受給資格者証
(教育訓練受給資格通知を交付)
◆気をつけたい点
気をつけたい点もあります。マイナンバーカードを活用して失業認定等の手続きを希望した場合、それ以降は原則として受給資格者証等による手続きに変更することができません。また、本人認証時のパスワード入力時に3回連続で誤入力するとロックがかかり、パスワード再設定の手続きが必要です。当該手続をするという方には、ご案内するとよいでしょう。
【厚生労働省「マイナンバーカードで失業認定手続ができるようになります」】
高齢者の体力は低下傾向! これから企業が対策を講ずべきこと
◆65歳以上の高齢者の体力は低下傾向にある!
70歳までの雇用・就業機会の確保に向けた取組みを行うことが努力義務として企業に課せられているなか、気になるデータが公表されました。
高齢者の体力の低下傾向が顕著であることが、スポーツ庁の体力・運動能力調査(2021年度)でわかったのです。特に、65~74歳の男性の体力は過去10年間で最低を記録。週1日以上の頻度で運動している人の割合も同区分では減少しており、専門家は、「高齢者に運動習慣が広がり体力向上につながっていた流れが、頭打ちとなってきた」と警戒しています。
◆労働災害が増加する心配も……
高齢者の体力の低下は、労働災害の増加にもつながります。そもそも高年齢層の労働災害発生率は若年層に比べ相対的に高いのですが、これは身体機能や体力の低下といった高齢者特有の事情によるものと考えられるところ、今後ますます労働災害の発生件数が増えることが懸念されます。働く高齢者が増えるなか、企業としては、従来の想定以上に高齢者の体力が落ちていることを念頭に、安全に働いてもらうことのできる職場づくりを行っていかなければなりません。
◆特に重要な課題は「転倒対策」
特に意識して対応策を講じたいのは、年齢の上昇に着目した対策が必要な労働災害と位置づけられる「転倒災害」です。職場内の段差を極力なくす、通路を整頓して通行しやすくするといった対策を講じるとともに、厚生労働省作成の「転倒等リスク評価セルフチェック票」等を活用するなどして、自身の身体機能の状態について知っていただき、無理な動作をしないよう心がけてもらうようにするのが有効です。職種によっては、安全作業に必要な体力について定量的に測定する手法や評価基準について定め、高齢労働者の体力を把握することも必要でしょう。さっそく取組みを始めてみませんか。
【スポーツ庁「令和3年度体力・運動能力調査の結果について」】
11月は「下請取引適正化推進月間」です
中小企業庁と公正取引委員会は、毎年11月を「下請取引適正化推進月間」とし、違反行為を防止し、下請取引の適正化をはかるため、下請法の普及・啓発事業を集中的に行っています。令和4年度は「適正な 価格転嫁で 未来を築く」をキャンペーン標語に、以下の取組みを行うこととしています。
◆下請取引適正化推進講習会の開催
オンライン(経済産業省・中小企業庁webサイト「適正取引支援サイト」)により、親事業者の下請取引担当者等を対象に、下請法および下請振興法の趣旨・内容を周知徹底するとしています。この適正取引支援サイトでは、様々なコンテンツが提供されており、適正取引講習会を基礎から学ぶeラーニングの実施や、相談窓口の紹介、関連施策情報などが紹介されています。
◆適正取引講習会(テキトリ講習会)の開催
発注側企業と受注側企業の間の適正な価格に基づく取引を推進するため、受注側企業の経営者・担当者を対象とした「価格交渉サポート」、発注側企業の購買・調達担当者も対象とした下請法の遵守に向けて、様々な取引事例や違反事例を中心に解説した「下請法」のオンライン講習会を開催します(上記適正取引支援サイト上で紹介されています)。
◆下請かけこみ寺の利用促進
全国48カ所に設置された「下請かけこみ寺」では、中小企業の経営者が抱える取引上の悩み相談を受け付けています。代金の未払い・減額、不当なやり直し・返品、受領拒否、買いたたき、知財やノウハウ関連のトラブル、最低賃金関連のしわ寄せなど、トラブルは様々ですが、問題解決に向け、専門の相談員や弁護士によるアドバイスが受けられます。電話、オンライン、対面による相談(匿名相談可能)ができ、秘密厳守、相談無料です。
新入社員の理想の上司・先輩は、「仕事について丁寧に指導する人」
~日本能率協会の調査より
一般社団法人日本能率協会は、2022年度の「新入社員意識調査」を取りまとめました。協会が提供する新入社員向け公開教育セミナーの参加者を対象に、仕事や働くことに対しどのような意識を持っているかを調査したもので、4月4日~4月8日にインターネット調査で実施し、545人から回答を得ています。
◆理想の上司・先輩は、「仕事について丁寧に指導する人」が71.7%で1位
理想の上司・先輩を尋ねたところ、「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩(71.7%)」が1位で、2012年以降の調査で過去最高となりました。
一方、2012年、2014年に数値の高かった「場合によっては叱ってくれる上司・先輩」や「仕事の結果に対する情熱を持っている上司・先輩」は、今回の調査では大幅に数値が下がっています。
◆仕事の不安は、「上司・同僚など職場の人とうまくやっていけるか」が64.6%で1位
仕事をしていくうえでの不安については、「上司・同僚など職場の人とうまくやっていけるか(64.6%)」が1位となりました。続く2位は「仕事に対する現在の自分の能力・スキル(53.4%)」となっています。
社内の人間関係に不安を感じている一方で、社外の人間関係については「社外の人との人脈を築けるかどうか」が8.1%に留まり、社外の人脈づくりに対する不安は年々減っています。
◆抵抗がある業務は、「指示が曖昧なまま作業を進めること」が1位
仕事をしていくうえでの抵抗感について尋ねたところ、「上司や先輩からの指示が曖昧でも、質問しないで、とりあえず作業を進める」ことに「抵抗がある」(「抵抗がある」+「どちらかと言えば抵抗がある」)との回答が、82.7%で1位でした。
「指示が曖昧なまま作業を進めること」に対しては、8割が抵抗を感じており、質問のしやすい風土や対応が求められています。
【一般社団法人日本能率協会「2022年度 新入社員意識調査」】
高齢者の人口・就業者数が過去最高に~総務省統計より
総務省は、「敬老の日」(9月19日)にちなんで、我が国の65歳以上の高齢者(以下、「高齢者」という)の人口、就業について取りまとめました。
◆75歳以上の人口が初めて15%超に
統計結果によると、高齢者の人口(2022年9月15日現在推計)は3,627万人(前年比6万人増)で過去最多に、総人口に占める割合は29.1%(前年比0.3ポイント増)で過去最高となっています。また、75歳以上の人口は1,937万人(前年比72万人増)となり、総人口に占める割合は15.5%と、初めて15%を超えました。これは、いわゆる「団塊の世代」(1947年~1949年生まれ)が2022年から75歳を迎え始めたことによると考えられます。
◆非正規の高齢就業者が増加
2021年の総務省の労働力調査によると、高齢者の就業者(以下、「高齢就業者」という)数は909万人(前年比6万人増)で、18年連続で過去最多となっています。
また、高齢者の就業率(65歳以上の人口に占める就業者の割合)は25.1%(前年と同率)となっています。年齢階級別では、65~69歳の就業率は、10年連続で上昇し50.3%(前年比0.7ポイント増)で初めて50%を超え、70歳以上の就業率は、5年連続で上昇し18.1%となっています。
高齢就業者を従業上の地位別にみると、役員を除く雇用者が517万人(57.6%)で最も多くなっています。さらにこれを雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員が393万人(75.9%)となっています。なお、非正規の職員・従業員は、2011年の168万人から2021年では393万人と、10年間で225万人増加しています。
◆世界的にも就業率は高水準
国際的にみると、日本の高齢者人口の割合(29.1%)は世界で最も高く、次いでイタリア(24.1%)、フィンランド(23.3%)、プエルトリコ(22.9%)などとなっています。また、主要国における高齢者の就業率についても、日本(21.5%)は韓国(34.9%)に次いで高い水準となっています。
高齢就業者は今後も増加することが予想されます。企業は国の政策や支援制度を活用して、いっそう高齢者の雇用対策に取り組む必要がありそうです。
【総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」】
11月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
10日
[公共職業安定所]
15日
30日
[公共職業安定所]