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『エスネットワークス人事労務通信2017年5月号』を掲載致しました。

6月から見直しが実施される「産業医の役割」

 

◆報告書の公表と省令改正

近年、メンタルヘルス対策や過重労働対策等、労働者の健康確保対策の重要性が増しているところですが、それに伴い「産業医」に求められる役割が変化し、ストレスチェックをはじめとして対応すべき業務も増加しています。

このような状況の中、昨年12月に「産業医制度の在り方に関する検討会報告書」がまとめられ、それを受けて厚生労働省が今年3月に産業医の役割等に関する省令の改正を行い、6月1日より施行されることとなっています。

企業の実務にも影響を与えることとなりますので、改正の内容を紹介いたします。

 

◆改正の内容

(1)健康診断の結果に基づく医師等からの意見聴取に必要となる情報の医師等への提供

事業者は、各種健康診断の有所見者について医師等が就業上の措置等に関する意見具申を行ううえで必要となる労働者の業務に関する情報を当該医師等から求められたときは、これを提供しなければならないこととする。

(2)長時間労働者に関する情報の産業医への提供

事業者は、毎月1回以上、一定の期日を定めて、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間の算定を行ったときは、速やかに、その超えた時間が1月当たり100時間を超えた労働者の氏名および当該労働者に係る超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならないものとする。

(3)産業医の定期巡視の頻度の見直し

少なくとも毎月1回行うこととされている産業医による作業場等の巡視について、事業者から毎月1回以上産業医に所定の情報が提供されている場合であって、事業者の同意がある場合には、産業医による作業場等の巡視の頻度を、少なくとも2月に1回とすることを可能とする。

 

◆「働き方改革」における位置付けは?

ストレスチェック制度の開始(2015年12月)で改めて注目を集めることとなった産業医。

今年3月公表の『働き方改革実行計画』に盛り込まれた「病気の治療と仕事の両立」の項目の中でも、“産業医の役割の重要性と機能強化”や“産業医が効果的な活動を行いやすい環境整備”がポイントとされており、今後ますます「産業医の役割」に注目が集まりそうです。

 

残業規制の抜け穴!? 自主的な「休日出勤」にご用心

 

◆依然注目される「時間外労働の上限規制」

政府が推進している働き方改革の一環として、「時間外労働の上限規制」が大きな注目を集めています。

現行法においては、「特別条項付き三六協定」を労使間で締結することにより、繁忙期に上限の無い残業をさせることも事実上は可能です。

これが今後の法改正で、「たとえ労使協定を締結していても、労働時間は年間で720時間を上回ることができない」こととなる見通しです。

 

◆絶対に避けたい「長時間労働による摘発」

違反企業には当然、罰則が課されますし、公共事業に入札できなくなるといった影響もあります(厚生労働省は、違法な長時間労働が認められた企業名を各自治体などに向け積極的に公表しています)。

また、ひとたび労基署の調査などを受け、“ブラック企業”としてネット等を通じ拡散するような事態になれば採用活動などにも大きく響く時代ですので、企業としては何としても避けたいところです。

 

◆残業規制の抜け穴である「休日出勤」

一方で、時間外労働の上限720時間には「抜け穴」が存在する、とも指摘されています。

その1つとして、「休日に働く時間」はこの時間が含まれていないことがあります。詳細はまだ決まっていませんが、休日労働の抑制は企業の努力義務となりそうです。

今後は、就業時間内に業務を終えることができなかった従業員が、自主的に休日出勤する、ということも増えるかもしれません。

 

◆自主的な休日出勤をさせない取組みを

会社が命じていない休日出勤により、様々な問題が起こり得ます。

休日の時間外労働には3割5分の割増賃金が発生しますし、この従業員が法律上定められた休日(1週間に1日、もしくは4週間を通じ4日以上)を取らないようなことがあれば、これも法律違反です。労災が発生するリスクもあります。

トラブル発生時に、いくら企業側が「従業員が勝手に休日出勤した」と主張したところで、会社が休日出勤を黙認していたと労働基準監督署にみなされれば、処罰は免れません。

このような従業員が増えないよう、今後企業は労務管理に一層気を付けねばなりませんが、それでもなお、上司の指揮命令を無視して休日出勤を繰り返すような従業員には、人事考課などで厳しく対応しましょう。

 

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