『エスネットワークス人事労務通信2018年10月号』を掲載致しました。
10月は「年次有給休暇取得促進期間」です
◆「年次有給休暇取得促進期間」とは
厚生労働省は、年休を取得しやすい環境整備を推進するため、次年度の年休の計画的付与制度について労使で話し合いを始める前である10月を「年次有給休暇取得促進期間」として、全国の労使団体に対する周知依頼、ポスターの掲示、インターネット広告の実施など、集中的な広報活動を行って、計画的付与制度の導入を促進しています。
◆「働き方改革法」成立で年休5日の強制付与が義務化
「働き方改革関連法」成立に伴う労働基準法の改正により、平成31年4月から、使用者は、年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、毎年5日間について、時季を指定して年次有給休暇を与えることが必要となりました(ただし、計画的付与制度などにより、労働者がすでに取得した年次有給休暇の日数分は、時季指定の必要がなくなります)。
◆年休取得率の低迷が背景
これは、年次有給休暇の取得率が低迷していて、いわゆる正社員のうち約16 %が年次有給休暇を1日も取得しておらず、また年次有給休暇をほとんど取得していない労働者については長時間の比率が高い実態にあることを踏まえ、年5日以上の年次有給休暇取得が確実に進む仕組みを導入することとしたものです。年次有給休暇については、ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議において策定された「仕事と生活の調和推進のための行動指針」において、2020年までにその取得率を70%とすることが目標として掲げられています。
◆厚労省がリーフレット作成
厚生労働省は、作成したリーフレットのなかで、「計画的付与制度の活用」「チームのなかで情報共有を図っての休みやすい職場環境づくり」「土日祝日にプラスワンした連続休暇取得の促進」などを掲げ、その具体的な手法と効果を紹介しています。来年度になって慌てて対策を講じなくてすむよう、いまから具体的な制度設計と運用方法を検討しておきましょう。
【厚生労働省「年次有給休暇取得促進」事業主向けホームページ】
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/sokushin/jigyousya.html
「働き方改革法」に対する企業の意識~エン・ジャパン株式会社の調査から
人材採用・入社後活躍のエン・ジャパン株式会社は、人事担当者向けの総合情報サイト「人事のミカタ」上で、経営者や人事担当者を対象に「働き方改革法案について」アンケート調査を行いました(回答者648名)。それを基に、企業が「働き方改革法案」に対してどこまで認識があるか、またどう感じているかの実態を紹介します。
◆調査結果の概要
1 「働き方改革法案」の認知度
「働き方改革法案」を知っているかという質問に対して、「概要を知っている」(74%)、「内容を含め知っている」(21%)と、認知度は95%に達しています。
2 経営への支障度合
次に、「働き方改革法案」が施行されることで経営に支障がでるかという質問に対しては、「大きな支障が出る」(9%)、「やや支障がでる」(38%)とあり、企業規模が大きくなるにつれて「支障がでる」と回答する割合が増加しています。
3 経営に支障が出そうな法案について
「経営に支障がでる」と回答した方に、「支障が出そうな法案はどれか」という質問に対しては、「時間外労働(残業)の上限規制」(66%)が最も多く、次に「年次有給の取得義務化」(54%)、「同一労働同一賃金の義務化」(43%)と続きます。
また、業種別に見ると、広告・出版・マスコミ関連の「時間外労働の上限規制」(80%)、「年次有給取得の義務化」(70%)、商社の「時間外労働の上限規制」(74%)が目立っています。
◆回答者の声
働き方について日本は他国よりも遅れていて、各人が家庭の状況や自身の体調・結婚や出産などを抱えて仕事をしているのだから、国が柔軟に対応して働き方が多様化することは多くの問題が解決することにつながるといった意見や、中小企業にとっては厳しいところがあるもしれないが、従業員にとっては良い制度と肯定的な意見があります。
一方で、能力差があると思われる職場で同一労働同一賃金は判断が難しい、残業の上限や有給を義務化したら生産性が下がる、生産性が下がる分人を増やしたら人件費が上がる、コスト削減のための無理な施策を考えてしまうのではないかと否定的な意見もあります。
【エン・ジャパン「企業に聞く「働き方改革法案」実態調査」】
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2018/14941.html
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