『エスネットワークス人事労務通信2019年3月号』を掲載致しました。
障害者雇用をめぐる最近の動き
◆平成30年4月からの障害者雇用率制度
すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。この法定雇用率が、平成30年4月1日から次のように変わっています。民間企業2.0%→2.2%。国、地方公共団体等2.3%→2.5%。都道府県等の教育委員会2.2%→2.4%。
◆平成30年12月公表の「平成30年国の機関等における障害者雇用状況の集計結果」
例年、一般事業主、国、地方公共団体及び独立行政法人等は、6月1日時点の障害者雇用の状況を報告しなければならず、それを受けて12月に厚生労働省から「障害者雇用状況の集計結果」が公表されます。平成30年12月の公表では、「国の機関等における障害者雇用状況の集計結果」とされ、民間企業についての記述はありませんでした。民間企業については、データ入力のための作業ツールの不具合により、平成31年3月末までに公表する予定とされています。
12月の集計結果によると、行政や司法など国の機関での2018年6月時点の障害者雇用率が1.22%でした。法定雇用率の2.5%を満たすには計算上で約4,300人不足し、8割以上の機関が基準を達成していませんでした。障害者雇用については、国や地方自治体の機関で水増しが相次いで発覚し、各機関が法定雇用率の達成に向け採用を急いでいます。
◆障害者雇用率未達成の省庁は予算減額
民間企業では、障害書雇用率を達成すると、超過人数1人につき月2.7万円の調整金が支給されます。一方、未達成の場合は、不足人数1人につき月5万円の納付金が徴収されます。このペナルティーが民間企業だけにあり、国等の機関にないのは不公平だとの批判が以前からありました。
政府は来年度から、法定雇用率を達成できなかった省庁の予算を減額する方針を決めました。国の機関では不足1人につき、翌年度の予算から60万円を減額します。減額対象の予算項目は備品購入などに充てられる「庁費」とします。
◆障害者手帳のカード化、自治体判断で4月から
厚生労働省は、以前から障害者手帳をカード化する方針を打ち出していましたが、この4月にも省令を改正し、各自治体の判断で障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳をカード化できるようにする方針を決めました。現在の身体障害者手帳は縦11.4センチ、横7.5センチで、「持ち運びしにくく、劣化しやすい」など、障害者などからカード型に変更するよう求める声がありました。カード型の手帳は耐久性のあるプラスチックなどの素材を利用し、運転免許証やクレジットカードと同じ大きさにします。また、カードに氏名や住所、障害の度合いなどを記載します。
社内失業者の実態~エン・ジャパンの調査から
エン・ジャパン株式会社は、同社が運営する人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』上でサイト利用企業を対象に「社内失業」に関する実態調査を行いました。その結果、予備軍を含め「社内失業者がいる」と回答した企業は23%にも上っています。下記、調査結果を見ていきます。
◆社内失業とは?
社内失業とは、「労働者が正社員として企業に在籍しながら、仕事を失っている状態」のことをいいます。本調査では、約7割の人がこの言葉を知らない、もしくは名称は知っているが意味は知らないと答えています。実際、社内失業者がどれほどいるのか気になるところですが、2011年の内閣府調査によれば、全国の労働者の8.5%にあたる465万人が該当しました。
◆社内失業者がいる企業は、予備軍を含めて23%!
今回の調査では、現在、社内失業状態の社員がいると答えた企業は23%(いる:6%、いる可能性がある:17%)に上っています。
業種で見ると「メーカー」(28%(いる:7%、いる可能性がある:21%))が最多で、次いで流通・小売り関連(いる:5%、いる可能性がある:20%)、「サービス関連」(いる:8%、いる可能性がある:16%)と続いています。
企業規模別では、「1,000名以上」が41%(いる:11%、いる可能性がある:30%)と顕著で、規模が大きいほど、社内失業者数も増えていく傾向にあるようです。
社内失業者の属性で見ると、年代は「50代」で57%、「40代」で41%、「30代」で26%。役職は「一般社員クラス」が80%と圧倒的でした。職種は「企画・事務職(経営企画、広報、人事、事務 他)」46%と最多で、次いで「営業職(営業、MR、人材コーディネーター他)」で31%となっています。
◆社内失業者発生の要因は「該当社員の能力不足」、企業の対策は「再教育」
社内失業者が発生する要因として、「該当社員の能力不足」(70%)が最多で、次いで、「該当社員の異動・受け入れ先がない」(51%)「職場での人間関係が悪い」(26%)が続きます。
企業としての今後の対策としては、「該当社員への教育」(35%)が最多で、次いで「特に何もせず、状況を見る」(22%)「職階の見直し」(21%)「自己啓発(学び直し等)の支援」「賃金体系(基本給)の見直し」(いずれも20%)を検討しているとしています。
“仕事をしている風のまま、定年を目指しているように感じる。やる気の無さや意識の薄さをどのように改善させていけばよいのかが課題である”“解雇したいが、モンスター社員なので、訴訟を起こされる可能性があり、解雇できない”“成果が出なくても他の人と同じ基本給がもらえるので、比べたとき周りの士気を下げてしまう可能性がある”―社内失業についての具体的な悩みや課題の声が上がっており、企業は手を施そうと検討・対応するも、社内失業者本人の改善意識が希薄で対応には苦慮しているようです。
【参考】エン・ジャパン「800社に聞いた「社内失業」実態調査」
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/16439.html
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