2023年12月25日
親子関係や婚姻関係等を確認する行政手続で戸籍謄抄本が不要に
◆改正戸籍法施行で利便性アップ
令和元年成立の改正戸籍法には、本籍地の市区町村でなければ戸籍謄本を取得できない等の不便を解消するための新システム構築等が盛り込まれていましたが、いよいよ新システムが完成し、令和6年3月から次の3点が変わります。
○行政手続における戸籍謄抄本の添付省略が可能に
○戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略が可能に
○本籍地以外での戸籍謄本発行が可能に
詳細は以下の通りです。
◆行政手続における戸籍謄抄本の添付省略が可能に
例えば健康保険の被扶養者認定や国民年金第3号被保険者の資格取得事務における婚姻歴の確認といった、親子関係や婚姻関係等を確認する手続きでマイナンバーを利用することとなり、戸籍謄抄本の添付省略が可能になります。
◆戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略が可能に
婚姻届や養子縁組届など様々な戸籍の届出の際に、戸籍謄抄本の提出が不要になります。
さらに、戸籍の届書が提出後電子化されることで、すぐに新しい戸籍謄抄本が発行できるようになります。
◆本籍地以外での戸籍謄本発行が可能に
住んでいる市区町村や勤務先の最寄りの市区町村の役場の窓口で、自身の戸籍のほか、配偶者、父母、祖父母、子の戸籍の謄本も取得可能になります。
さらに、オンラインで行政手続をする際に利用可能な戸籍の証明書として、新たに「戸籍電子証明書」が発行されるようになります。パスポートの発給申請時にこの証明書を行政機関に提示することで戸籍証明書等の添付が不要となる予定で、今後、他の手続きにも拡大される見通しです。
【法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」】
“つながらない権利”によって勤務時間外の連絡を拒否したいと思っている人の割合は72.6%~連合の調査結果から
テレワークや副業などの広まりから働き方が柔軟になった一方で、勤務時間とプライベート時間の区別がつけづらくなってきています。連合が実施した、勤務時間外の業務上の連絡に関する意識や実態、“つながらない権利”に関する意識調査から注目すべき点をご紹介します。
◆調査結果のポイント
○「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがある」72.4%
その頻度は、「ほぼ毎日」(10.4%)、「週に 2~3 日」(14.3%)、「月に2~3日」(12.1%)、「月に 1 日以下」(17.9%)。業種別にみると、[建設業](82.7%)が最も高く、次いで[医療、福祉](79.6%)、[宿泊業、飲食サービス業](78.0%)となっています。
○「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくるとストレスを感じる」62.2%
また、その連絡の内容を確認しないと、内容が気になってストレスを感じると回答した人の割合も、60.7%ありました。同様に、取引先からの連絡については、59%の人がストレスと感じているようです。
○「“働くこと”と“休むこと”の境界を明確にするために、勤務時間外の部下・同僚・上司からの連絡を制限する必要があると思う」66.7%
また、「取引先からの連絡を制限する必要がある」と回答した人の割合も67.7%ありました。
○「“つながらない権利”によって勤務時間外の連絡を拒否できるのであれば、そうしたいと思う」72.6%
一方で、「“つながらない権利”があっても、今の職場では拒否は難しいと思う」と回答した人は62.4%いて、業種で見ると、[建設業](74.1%)が最も高く、次いで[宿泊業、飲食サービス業](73.2%)[医療、福祉](72.8%)となりました。
◆“つながらない権利”の法制化
勤務時間外に仕事上のメールや電話への対応を拒否できる権利、いわゆる「つながらない権利」は、日本では法制化されていません。法制化されたとしても、業種によっては、特殊性や緊急性によって、権利を十分に行使できない可能性もあります。また、拒否することによる勤務評価やキャリア形成への悪影響を心配する労働者もいます。
権利を行使したい反面、行使することによる不安を強く感じる人は多いでしょう。今後日本でどのように法整備されるのか、注目です。
【日本労働組合総連合会「“つながらない権利”に関する調査2023」】
介護離職、支援制度利用の現状と対策の必要性
◆介護離職に関するアンケート結果
東京商工リサーチが行った「介護離職に関するアンケート」の結果によると、2023年8月までの1年間に介護離職が発生した企業は10.1%あったそうです。離職してしまった従業員の属性は、正社員が65.3%を占めています。
一般的には、50歳代から親の介護を担う必要が高まる傾向にあります。つまり、働き盛りの中堅以上の従業員が、介護のために離職してしまう可能性が高まるということです。
◆制度の利用状況
一方、同調査では、介護休業または介護休暇の利用状況についての結果も示されています。介護離職した従業員の半数以上(54.5%)が、介護休業または介護休暇を利用していなかったことがわかりました。
仕事と介護の両立支援をマニュアルなどで明文化している企業は50.2%あったとのことですので、従業員への制度周知や会社による利用の働きかけの不足、従業員が周囲に遠慮してしまい休暇が取りにくいといった状況がうかがえます。
◆育児・介護休業法の改正予定
2024年の通常国会で、育児・介護休業法の改正が予定されています。
従業員への介護に関する情報提供や制度選択の意向確認の義務化などが検討されているほか、休業制度の利用を促すための研修や相談窓口の設置を求めることも議論されるようです。
「介護のことは従業員個人の問題」という意識だったり、介護に限らずそもそも休暇が取りにくかったりというのでは人を採用できる会社にはなれない、という時代になっているようです。今後の法改正の動向も見ながら、従業員の介護離職による損失を防ぐ方策をしっかりと考えていきたいですね。
価格交渉促進月間(令和5年9月)のフォローアップ調査結果(速報版)が公表されました
中小企業庁では、毎年3月と9月の「価格交渉促進月間」に合わせ、受注企業が、実際にどの程度価格交渉・価格転嫁できたかを把握するための調査を実施しています。
去る11月28日に、2023年9月の価格交渉促進月間における中小企業・小規模事業者の価格転嫁・価格交渉に関する調査結果が公表されました。
◆全体的な傾向
価格転嫁・価格交渉ともに、「コストが上昇していないため、価格転嫁は不要である」旨の回答の割合が、約2倍に増加しました。
◆価格交渉
①「発注企業からの交渉申し入れをきっかけに交渉が行われた」企業の割合が約2倍に増加、②また、「コストが上昇し、交渉を希望したが、交渉が行われなかった」企業の割合は減少という結果となり、価格交渉しやすい雰囲気が徐々に醸成されつつあります。
◆価格転嫁
①コスト全体の転嫁率は、前回調査と比較して微減し、45.7%となったものの、②「全く転嫁できなかった」または「コストが上昇したのに減額された」企業の割合は減少という結果となり、価格転嫁の裾野は広がりつつあります。
◆今後のスケジュール(予定)
2023年12月以降に調査結果(確報版)が公表されます。
また、2024年1月に発注企業ごとの価格交渉・価格転嫁の評価を記載したリストを公表し、評価が芳しくない企業に対する、所管大臣名による指導・助言が行われることとされています。
【経済産業省「中小企業の価格転嫁に関する調査結果(速報版) 価格交渉促進月間(2023年9月)フォローアップ調査」】
国家公務員の男性育休取得率が初の7割に
◆令和4年度の国家公務員の男性育休取得状況
人事院は、仕事と家庭の両立支援のための制度等の検討に資するため、令和4年度における一般職の国家公務員の育児休業等の取得実態について調査を実施し、一般職の男性職員の育児休業取得率が過去最高の72.5%(前年度比9.7ポイント増)だったことを公表しました。7割を超えたのは初で、4年前の平成30年度では21.6%だったことを踏まえると、ここ数年で急激な増加となっています。
◆取得期間は「2週間以上1月以下」が約5割で最多
同調査によれば、取得期間としては、男性では「2週間以上1月以下」が48.6%で最も多く、「1月超3月以下」(22.5%)、「3月超6月以下」(9.2%)が続いています。なお、女性では「9月超12月以下」が31.2%で最も多く、次いで「12月超24月以下」(30.3%)となっています。
◆くるみんの認定基準も厳しく
政府は2030年度までに、民間を含む男性育休の取得率を85%まで引き上げる目標を掲げています。「子育てサポート企業」として厚生労働大臣が認定をする「くるみん」についても、2024年以降に、男性育休取得率の基準が10%から30%に引き上げられる方針です。
育児・介護休業法改正後、男性育休の取得促進についても広く知られるところとなってきました。男性の育休取得の促進は、企業にとっても人材確保や両立支援の面から無視できない課題です。今後より一層の取組みを検討していきたいところです。
【人事院「仕事と家庭の両立支援関係制度の利用状況調査(令和4年度)の結果について」】
旅館業法が改正されています~カスハラは宿泊拒否も
◆改正の背景
旅館業の営業者は、公衆衛生や旅行者等の利便性といった国民生活の向上等の観点から、一定の場合を除き、宿泊しようとする者の宿泊を拒んではならないとされています。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行期において、①宿泊者に対して感染防止対策への実効的な協力の求めを行うことができない、②いわゆる迷惑客について、営業者が無制限に対応を強いられた場合には、感染防止対策をはじめ、本来提供すべきサービスが提供できない、などという営業者からの意見が国に寄せられました。
こうした情勢の変化に対応して、旅館業法等の一部を改正する法律が成立し、令和5年12月13日に施行されました。
◆改正のポイント
改正の主な内容は以下の通りです。
1 宿泊拒否事由の追加
2 感染防止対策の充実
3 差別防止の更なる徹底等
4 事業譲渡に係る手続きの整備
注目したいのが1の項目です。今回の法改正で、宿泊を拒むことができる事由として「特定要求行為が行われたとき」が追加されました。特定要求行為とは、カスタマーハラスメントに該当する行為等を指し、その例として、❶不当な割引、契約にない送迎等、過剰なサービスの要求、❷対面や電話等により、長時間にわたり、不当な要求を行う行為、❸要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が不相当なものなどが挙げられます。他方、障害のある方が社会の中にある障壁の除去を求める場合や、障害を理由とした不当な差別的取扱いを受けたことへの謝罪等を求めることは、これに当たりません。
プライベートはもちろん、コロナ禍で控えていた出張を再開した企業も増えています。旅先で従業員が不測の事態に陥ることのないよう、今回の改正を周知し、宿泊者もサービス提供者も、誰もが気持ちよく過ごせるよう心がけていきたいですね。
【厚生労働省「令和5年12月13日から旅館業法が変わります!」】
令和5年改正労基則等に係る裁量労働制に関するQ&A(追補版)が作成されました
厚生労働省は、今年8月に作成した裁量労働制に関するQ&Aについて、追補版を作成しました。追加された内容からいくつか抜粋して紹介します。
◆労働者の自己申告による労働時間の状況の把握は可能
専門型・企画型において、労働時間の状況の把握方法は「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切なもの」であることが必要とされています。そのため、労働者の自己申告による把握は原則認められません。ただし、ここでいう「労働時間の状況」の概念およびその把握方法は、安衛法66条の8の3と同一のものであるため、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合においては認められます。
◆事前に協定または決議し、制度を適用しない期間後に再適用することは可能
専門型・企画型において、健康・福祉確保措置として、把握した労働時間が一定時間を超えない範囲内とすること、および当該時間を超えたときはみなしの効果が生じないこととする措置を定めた場合に、一定期間の適用をしないこととしたうえで、同期間経過後に再度制度を適用することをあらかじめ協定または決議し、実施することは可能です。
ただし、適用しない期間は事前に労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等または労使委員会と協議のうえで決定しておくことが必要です。また、再度適用するにあたっては、適用解除後の労働者の勤務状況(労働時間の状況を含みます)や健康状態等を踏まえて、使用者が個別具体的に再適用の可否を判断することに留意する必要があります。また、いったんは適用が解除された以上、改めて労働者の同意が必要です。
◆評価制度および賃金制度の運用状況の説明は、概要資料等の開示を想定
専門型・企画型において、裁量労働制の適用対象である「労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度の運用状況(労働者への賃金・手当の支給状況や評価結果等をいう。)」の開示方法は、実際に支給されている平均賃金を示した資料を開示することや、賃金水準や制度適用に係る特別手当の実際の支給状況や評価結果等について、その分布をまとめた概要資料などを開示することが考えられます。特に適用対象である労働者が1名の場合は、賃金額等について一定の幅を持たせて開示すること、当該労働者の値が非適用労働者と比べてどの程度多いかもしくは少ないかという相対値を示すことなどが考えられますが、労使で協議のうえ、個人が特定できないようプライバシーの保護に十分留意が必要です。
【厚生労働省「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A」】
性的マイノリティに関する理解増進に向けた厚生労働省の取組み
令和5年6月に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が施行されました。この法律は、性的指向およびジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策の推進に関し、基本理念を定め、国および地方公共団体の役割等を明らかにするとともに、基本計画の策定その他の必要な事項を定めることにより、性的指向およびジェンダーアイデンティティの多様性を受け入れる精神を涵養し、性的指向およびジェンダーアイデンティティの多様性に寛容な社会の実現に資することを目的とするものです。これを受け、厚生労働省においても、性的マイノリティに関する理解促進に向けた取組みに関するホームページを開設しています。
◆性的マイノリティに関する理解増進に向けた取組み
採用の際に公正な選考が行われるよう、LGBT等の性的マイノリティなどの特定の人を排除しない旨、事業主への周知を行っており、応募者の適性・能力に関係のない事項について、面接で質問すること等はしてはならないとしています。
◆ハラスメントのない職場に向けて
セクハラ防止指針やパワハラ防止指針では、職場における性的指向・性自認に関する侮辱的な言動についても、ハラスメントに当たるとしています。また、労働者からの相談体制などの整備も、事業主の雇用管理上の措置義務となります。
◆性的マイノリティに関する悩みや困りごと等の相談・支援体制
労働局等にある総合労働相談コーナーや、よりそいホットライン(無料の電話相談)等において、性的指向・性自認に関連する労働問題をはじめとする相談・支援が受けられます。
◆性同一性障害を有する方の被保険者証の取扱い
医療保険制度全体の統一的な対応として、やむを得ない理由があると保険者が判断した場合には、戸籍上の性別を裏面のみに記載して差し支えないこと、また、戸籍名を裏面に記載したうえで通称名を記載する等の表記方法の工夫をして差し支えないこと、としています。
【厚生労働省「性的マイノリティに関する理解増進に向けて~厚生労働省の取組~」
産業雇用安定助成金に「産業連携人材確保等支援コース」が創設されました
厚生労働省は11月29日、産業雇用安定助成金に「産業連携人材確保等支援コース」を創設しました。景気変動や産業構造の変化その他によって事業活動の急激な縮小を余儀なくされた事業主が、生産性向上の取組みを行うために必要な人材を雇い入れた際に助成金を支給します。
◆助成の内容
生産性向上に資する取組み等に必要な新たな人材を雇い入れた場合に、その労働者の賃金の一部に相当する額を定額で助成します。
助成対象期間は、対象労働者の雇入れに係る日から起算して1年間です。なお、助成対象期間のうち最初の6か月を第1期支給対象期、次の6か月を第2期支給対象期といいます。助成額は、中小企業は1人あたり250万円(125万円×2期)、中小企業以外は1人あたり180万円(90万円×2期)です。
また、上限人数は1事業主あたり5人まで(同一の事業主が複数の雇用保険適用事業所を設置している場合は、当該事業所すべてをあわせて5人まで)となっています。
◆助成対象(主な要件)
【事業主】
・令和5年11月29日以降に中小企業庁の実施する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下「ものづくり補助金」という)」の事業計画書の申請を行い、当該ものづくり補助金の採択および交付決定を受けていること
・生産量(額)、販売量(額)または売上高等事業活動を示す指標について、ものづくり補助金の事業計画書の申請日の属する月の前々々月から前月の3か月間の平均値が、前年同期(雇用保険適用事業所設置後であって労働者を雇用している場合に限る)に比べ10%以上減少していること
・下記の【労働者】の雇入れにあたって、次のa~cまでのすべての条件を満たすこと
a. 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れること
b. 期間の定めのない労働契約を締結する労働者(パートタイム労働者は除く)として雇い入れること
c. 「ものづくり補助金」の補助事業実施期間の初日から当該期間の末日までに雇い入れること
・下記の【労働者】の雇入れ日前6か月から本助成金の支給申請までの期間に、雇用する労働者を解雇等していないこと
・雇入れに係る事業所で受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す指標について、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の事業計画書の申請日の属する月の前々々月から前月の3か月間の月平均値が前年同期に比べ5%を超えかつ6名以上(中小企業事業主の場合は10%を超えかつ4名以上)減少していないこと
【労働者】
「ものづくり補助金」の交付決定を受けた事業に関する業務に就く者であって、次の①と②に該当する者
① 次のaかbのいずれかに該当する者
a. 専門的な知識や技術が必要となる企画・立案、指導(教育訓練等)の業務に従事する者
b. 部下を指揮および監督する業務に従事する者で、係長相当職以上の者
② 1年間に350万円以上の賃金が支払われる者
詳細は、下記厚生労働省のリーフレットでご確認いただき、当事務所へご相談ください。
【厚生労働省「産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)リーフレット」】
賃金改定率が過去最高に~厚生労働省実態調査から
◆賃上げ実施企業、引上げ額、引上げ率ともに昨年より増加
厚生労働省の令和5年「賃金引上げ等の実態に関する調査」結果によると、1人当たりの平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は89.1%(前年同比3.4ポイント増)、1人当たりの平均賃金の引上げ額は9,437円(同3,903円増)となりました。平均賃金の引上げ率は3.2%(同1.3ポイント増)で、平成11年以降で最も高い数値となりました。
同調査は、常用労働者100人以上を雇用する会社組織の民営企業を対象とし、3,620社を抽出して1,901社から有効回答を得たものです。
産業別にみると、平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は、「建設業」が100.0%で最も高く、次いで「製造業」が97.7%、「電気・ガス・熱供給・水道業」が92.9%となっています。
平均賃金の引上げ額は、「鉱業、採石業、砂利採取業」が18,507円(引上げ率5.2%)で最も高く、次いで「情報通信業」が15,402円(同4.5%)、建設業12,752円(同3.8%)となっています。
◆すべての企業が業績好調による賃金引上げとは限らない
賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素の割合をみると、「企業の業績」が36.0%で最も多く、次いで「労働力の確保・定着」が16.1%、「雇用の維持」が11.6%となっています。
本調査結果の通り、近年、賃金引上げを実施する企業が増加しています。その理由として、物価上昇への対応や従業員のモチベーション向上、人材確保・定着などが挙げられます。しかし、賃金引上げを実施するすべての企業が業績好調による引上げとは限らず、業績は改善しないが従業員の生活を守り、人材流出を防ぐことを狙いとして実施する企業も多いと考えられます。賃金引上げを実施する際には、政府が掲げている賃金引上げに向けた各種支援策等を参考にしながら慎重に検討する必要があるでしょう。
【厚生労働省「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」】
1月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
10日
※ただし、6ヶ月ごとの納付の特例を受けている場合には、令和5年7月から12月までの
徴収分を1月22日までに納付
31日
本年最初の給料の支払を受ける日の前日まで