2016年03月15日
厚労省が指針を公表!「長期治療が必要な従業員」への対応のポイント
◆2月下旬に指針公表
人手不足が深刻化しつつある中、女性や高齢者、障害者など、多様な人材の活用が重要になっています。
また、近年はがんや心臓病、脳卒中など長期にわたる治療が必要な疾病を抱えながら働く従業員も増えてきましたが、これらの方を支援する環境が整っている企業はまだまだ少ないのが現状です。
そんな中、厚生労働省は、がん患者等の離職を防止し、治療を受けながら働き続けられるようにするため、企業が実施する支援策などを示した指針(事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン)を2月下旬に公表しました。
◆指針の特徴は?
この指針では、職場における意識啓発のための研修や治療と職業生活を両立しやすい休暇制度・勤務制度の導入などの環境整備、治療と職業生活の両立支援の進め方に加え、特に「がん」について留意すべき事項をとりまとめています。
◆指針のポイント
今回の指針のポイントは以下の通りです。長期治療が必要な従業員に対しても配慮するため、企業には主に以下の内容を参考にした取組みが求められることになります。
(1)治療と職業生活の両立支援を行うための環境整備
・労働者が安心して相談・申出を行える相談窓口を明確化
・時間単位の休暇制度、時差出勤制度などを検討・導入
・主治医に対して業務内容などを提供するための様式等を整備
(2)治療と職業生活の両立支援の進め方>
・労働者が事業者に支援を求める申出(主治医による配慮事項などに関する意見書を提出)
・事業者が就業上の措置などを決定・実施(「両立支援プラン」の作成が望ましい)
(3)がんに関する留意事項
・治療の長期化や予期せぬ副作用による影響に応じた対応の必要性
・がんの診断を受けた労働者のメンタルヘルス面へ配慮
◆職場の理解・協力が不可欠
ある調査では、がん罹患後も離職せず、同じ勤務先で仕事を継続できた最大の理由は「職場の上司や同僚の理解・協力があったため」との結果が出ています。
職場の環境整備とともに、重要なポイントの1つと言えるでしょう。
「労働移動支援助成金」悪用による影響で支給要件厳格化へ
◆助成金を利用してリストラ?
厚生労働省は、人材会社が「労働移動支援助成金」を利用して退職勧奨を行っているという指摘を受け、4月から支給要件を厳格化する方針を固めたようです。
これは、人材会社が人員削減等を計画する企業にリストラのノウハウを提供し、対象となった従業員の再就職支援の委託費用の一部を人材会社が利益として得ているとして、国会で問題視されていたものです。
また、人材会社が関与したケースでは、企業が評価の低い「非戦力(ローパフォーマンス)社員」をリストアップし、退職を迫っていた例もあったようです。
◆助成金の概要
労働移動支援助成金は、事業規模の縮小等により離職を余儀なくされる労働者等に対する再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇を付与したりする事業主に支給する制度です。
平成26年3月より、送り出し企業に支給される再就職支援奨励金の支給対象が拡充され、中小企業だけでなく大企業にも支給されることになりました。また、受入れ人材育成支援奨励金が創設されています。
◆支給要件厳格化の具体的な内容
今後、厚生労働省は企業が助成金を申請する際に、退職者本人の署名や住所の記入を求めることに加え、人材会社が企業にリストラを提案したりしなかったかどうかを確認し、問題があった企業には助成金の返還を求めることを検討しています(具体的な要件は3月末に決定する予定)。
今後、労働移動支援助成金を利用する際には、従業員の意思を尊重し、退職勧奨とならないように十分注意する必要があります。
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